アメリカでの学び

アメリカが日本の医療制度を取り入れない理由

「アメリカってちょっと病院行くだけで何百万って医療費かかるんでしょ?」と友達に心配された。そんなわけがない。アメリカの医療技術やサービスは世界から注目されていて、私はここで医療を受けられてありがたく思う。高い費用を払ってでも受けたい価値を感じる。

2021年、アメリカの医療保険の加入率は92%。うちは夫の職場(IT企業)の保険に入っていて、月々5万円。医療費は80~90%、歯医者は50~80%カバーされる。自動車メーカーの友達は、月々の保険料は無料。病院と歯医者は70~90%カバー。私(前職は教育、今は出版社と化粧品)の会社の保険も似たようなプラン。

友達家族を通して知っている会社では、コーヒーチェーン、大型スーパー、ファーストフードなども、社員に良い保険プランを提供している。医療保険の有無やプランは会社を選ぶ理由の一つになるので、会社側もより良い保険プランを用意している。

私は、自分または家族の一人が会社員で、その会社の医療保険に入り、月1~2回病院にかかる頻度でまあまあ健康であれば、保険料や医療費は負担ではない。

医療保険=職場で働くことに強いつながり

小さな会社だと医療保険を提供していない場合があるので、個人で保険に入る。私達は保険を提供していない会社では働いたことはないが、夫婦で同じ時期に別々に起業をしたので、個人で保険に入ったことがあった。その時は家族で月々15万円。

でも会社から提供されていた保険よりもカバーされないので、いつも以上に体調管理に気をつけて、バランスの良い食事をし、歯をしっかり磨き、ケガをしないように生活していた。

その後、やはり職場の保険に入る方がカバー率もよく家計にも優しいので、私が会社で働くことにした。医療保険=職場で働くことに強いつながりがあるのは、プラス点なのかマイナス点なのか分からない。でも生活=働くことは切り離せないので、私は今の所このシステムでも合っている。

クラファンで医療費の協力を得られる人と得られない人の違い

医療費支払いが困難な家庭にはすぐに身近な人がクラウドファンディングを立ち上げて、人々の寄付が集まるのはアメリカの素晴らしい文化。助けが必要な人が救済される仕組みが充実しているのは、自分達で協力し合う意識と行動力があるからだと経験から学んだ。人々の優しさや支援は、アメリカの日常に溢れているからこそもっと報道されてほしい現実。

今までクラウドファンディングに関わってきた中で、協力を得られる人と得られない人の違いを見てきた。それは、普段から交流しているコミュニティの有無や自分で積み重ねてきた人間関係がどのようなものか。

クラウドファンディングを立ち上げた後は、FacebookやNextdoorで身近な人々へ知らせたり、地域で普段から関わりのあるコミュニティに自分自身で協力をお願いするように促される。成功させるためにまず必ずやるべき事として知られている。アメリカのSNSは匿名ではなく実名でやる人が多いので、TwitterやInstagramに投稿して友達や家族に広げているのもよく見かける。知らない人達が運良く寄付に協力してくれるのを待つものではなく、自分の身近な人間関係に自分で知らせて、友達からそのまた友達へ協力を広げてもらう用に使われるのがクラウドファンディングのサイト。

人は孤独になればなるほど困り事が増えてくる。普段から人々の輪を大切にし、小さなことから大きなことまで助け合いができるコミュニティを増やしていきたい。

医療が存在するありがたさを知った

低所得者が個人で保険に入る場合、国からのサポートがあり、無料~安い保険がある。個人の事情があれば医療費が下げられる場合があるし、医療費が払えない場合は病院へ寄せられた寄付で治療費をカバーできることもある。相談すれば交渉してくれる。

医師がいないために医療が受けらることが稀な国から来た友達は、どんな医療でも受けられるアメリカの暮らしに感激し感謝していた。乳児死亡率が高い国でもあるので、自分の子供に何かあった時に助けてくれる医師がいることが、一番ありがたいそうだ。

私のように医療が安く受けられて当たり前の国から来た人は、低価格で質の高い医療があって当然だからサービスの部分を評価するようになると思う。とはいっても、私は日本とはシステムが違う予約の電話も慣れればスムーズにいくし、予約をしてから病院へ行くので待ち時間がほぼないアメリカの病院は快適に感じる。主治医が決まっているので、自分の身体のことをよく知っている医師が毎回診察をしてくれる安心感がある。

どんな人にも言えることだが、同じ手当を受けても、個人の受け取り方の違いから不満を抱く人もいれば感謝をする人もいる。

アメリカの医療費が全額自己負担の駐在員

数年前、日本の大手企業の駐在員に「会社の医療保険は歯医者が含まれていない。家族で加入できる安くて良い歯科保険を知ってますか?」と相談を受けて驚いたことがある。アメリカでの歯の治療費が全額自己負担どころか、病院にかかった時の医療費カバー率も低かった。周囲に聞いて一般的な保険を紹介したが、「やはり高いですね」と頭を抱えていた。

さらに日本企業の賃金は安すぎるので、アメリカ生活で医療費が重い負担になるのは当然。日本の中流家庭が、アメリカの貧困家庭に近いと思い始めた。企業は、日本から送り出す社員家族の生活費と医療費くらいは苦労させないであげてほしい。

日本の素晴らしい医療制度が成り立つ裏側

日本のように「皆が同じ保険で同じ費用で同じ医療」を受けられる制度は理想ではある。現実は、誰もが気軽に病院へ行けるため、治療や診察が必要ではない人達への対応が急増。医療機関を自由に選べるので、人気の病院が常に混雑して計画通りに回らない。医療従事者の過重労働が深刻な問題になっている。

医療制度だけでなく、素晴らしい日本のサービスが一体どう成り立っているかを知ろうとすると、その裏で犠牲になって働く人々や、更に安い賃金で雇われている外国人医療従事者がいる。多すぎて回らない仕事量に対して、人を増やして医療の質を上げていくのではなく、回らない仕事量を無理やり回させる。

日本は医療にお金をかけていないので、医療機関も稼ぎがなくなり廃業に追い込まれる。どんな国もすべての国民を満足に幸せにすることはできない。何かが、誰かが、犠牲になる。国の医療制度が破綻するか、病院が廃業するか、個人で医療費が払えなくなるか。

改善策として、人々は今まで通りの保険で通常の医療を受けられて、高い費用を払える人はより質の高い医療サービスを受けられるようにすればいいのではと思う。飛行機の座席の違いのように、行き着く先は同じだけれど、その過程でより良いサービスを受けたければビジネスクラス、通常でいいのならエコノミークラス。アメリカの医療制度や人々の助け合いの大きさを通して感じたこと。

アメリカが医療成長できる理由

アメリカは医療の研究が進み、新しい技術や薬やワクチンが開発されていく。それらが世界に広まり、命助かる人が増えていく。海外では認められていない臓器移植もアメリカで受けられる。外国籍でも緊急を要する順に移植リストに入れる。

医療の質も技術もサービスも成長できるのは、皆が同じ保険で同じ費用で同じ医療を受けられる、というシステムにしていないから。全てを平等にしようとすると、医療の質とサービスが落ち、税金が上がる。人々の反発が生まれる。

その国にはその国の医療制度がある。私は日本でもアメリカでも、薬が手に入り、医療が受けられることに感謝したい。それぞれの国の良い点や改善点を自分の目で確かめ、自分にできることは何か、行動できることは何か、という思いは常に忘れずにいたい。

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