皆さんの体験談

奥さんとは、これからも一緒にいたいですか? / ショウタさん編


僕自身、アスペルガー&ADHDだとここ最近ようやく自覚をしました。しかし、自覚する前と後で、自分自身の行動を変えることができず夫婦間で揉めごとが絶えない状況です…

妻に指摘されて、直そうとしていることです↓

  1. 言われたことをすぐに忘れたり、理解できないからメモする
  2. 質問の意図を理解せずに答えることがあると言われ、最後まで聞く
  3. 言っていることが分からなければもう一度聞く
  4. 答えを出すのに時間が欲しい時、妻にそう伝えることを意識する
  5. 頼まれたことを忘れるため、やることリストを作り、終わったらチェックする
  6. 思いやりや共感を持てと言われ、相手の立場になって考えるという意識を持つ
  7. 家事などできていないことが多いため、やることリストを作成して実行する(タオルは寝る前にかえる、お風呂の壁についた水滴は水切りで落とす、など)


忘れないためにメモを取ったり、指摘されたことを反省し同じことを繰り返さないためにノートに書いたり、重要な話は自分の中で紙に整理してから話すようにしています。

しかし、意識していても取り組んだ内容は、正直あまり意味を持ちませんでした。自分の行動を直すと妻と約束してからも、毎日何かしら失敗してしまい、妻に指摘され怒鳴られるという繰り返しです。すぐに僕も言い返してしまうので余計に問題は悪化する一方です。

努力をしても妻の期待には応えられず、むしろマイナスのことが起きてしまっています。

また、妻を蔑ろにしているわけではありませんが、妻からすると僕から共感してもらえていないことが、非常に問題になっております。

自分は努力している、自分の思考回路を理解して欲しいとは、今の妻の気持ちを考えると口が裂けても言えません。妻を助けてくれる人がいないのが現状で、それが自分でないのも情けない話です。

アランさんは診断された後、気をつけるようにしている行動に対して、どのように取り組みましたか?

逆に「これだけは変えられない」ことはありますか?

ご質問ありがとうございます。夫婦で話し合ったので、まずは僕の回答です。

奥さんとは、これからも一緒にいたいですか?

僕は診断後からすぐにカウンセリングに通い始めたのですが、最初のセッションでカウンセラーさんから聞かれたことがありました。

奥さんとは、これからも一緒にいたいですか?

まず、僕の妻への気持ちをクリアにする必要がありました。夫婦関係の改善となると、相手に直して欲しいこと、嫌なこと、理解できないこと、いろいろ出てきます。

でも、ただお互いの要望をぶつけているだけでは前へ進めません。自分がパートナーとこれからも一緒に人生を歩むと決めたのなら、お互いがまず自分自身に向き合い、自分の課題を改善する必要があります。

そして、一緒に生活をして行く上でお互いが同意できないことが出てくれば、妥協できる中間点を見つけて話し合っていきます。それらに取り組むモチベーションは、妻を愛していないと難しいことでした。

愛情がないと、「なぜこんなことをしなければいけないのか」「誰のためにする努力なのか」「誰が幸せになるのか」とストレスが溜まっていきます。

僕は、「妻と夫婦関係を再構築して幸せになりたい」という目的がありました。努力は辛い時もあり、投げ出したくなることもあります。

だから自分の努力は、何の目的のためにしているのかを、最初に明確にした方が良いと思います。

「あなたはこれから旦那さんとどうされたいのですか?」と、私も個人でのカウンセリングで同じことを聞かれました。「夫を愛しているから、仲良く暮らせるようになりたい」という私の目的を明確にしてからセッションが始まりました。

同感はできないけれど、共感ならできる

どのように取り組んだかについては、妻にとって一番大切なことから始めました。それは妻の気持ちを分かろうとすることです。

僕はもともと妻の話をあまり聞かない夫だったし、辛い気持ちを打ち明けてくれた時の対応も冷たくしてしまっていました。お互いの気持ちを理解し合うことの大切さに、初めて向き合いました。相手に共感をするのは難しいことです。でも、学べると思います。

以前、妻から「共感と同感の違い」について、こう説明されました。

私はただあなたに、私の辛い気持ちに寄り添って欲しいだけなの。話を聞いてくれたり、頷いてくれたり「今、辛い気持ちなんだね、そうなんだね」って、私の感情に共感をして欲しいの。理解できなくていいの。私の気持ちを理解して、同じ気持ちを持って欲しいという、同感は求めていないの。

共感が苦手なのは、僕の両親からの影響もありました。妻と全く同じ気持ちを持つことは難しいですが、話を聞き、同感はできなくても共感はできるようになりました。

気づいた時に気づいた側がやる

家庭内では、僕も同じく頼まれたことをすぐ忘れてしまうので、やることリストを作りました。

でも最初は妻に完璧を求められていて苦痛でした。何か一つ忘れてしまうと呆れられたり怒られました。元々の基準が違うので、僕は努力していても、妻は僕ができなかった「結果」しか見えないのです。努力はするけれど苦手分野を完全に克服することはできないということを、最終的に妻は理解してくれました。

そして、お互い「何を妥協できるかできないか」を夫婦で話し合いました。僕達も以前は「この食器はここにこうして、底が溶けちゃうから石鹸は使ったらここに置いて、バスタオルは使ったら新しいのにかえて」などなど、妻が決めたルールがたくさんあったのですが、今はなくなりました。

家庭内の細々としたタスクがどんどん増えていくと、そのタスクを忘れてしまうのは僕の特性が原因というより、単に妻という「違う人間の生活スタイルに合わせていくことができないという自然なこと」だと気づきました。

家庭内のタスクが増えれば増えるほど、僕は仕事の重要なタスクを忘れてしまうようにもなってしまいました。

それから夫婦で話し合いを重ねて、現在は「気づいた時に気づいた側がやる」という形になっています。この方が僕達には合っています。妻は「完璧主義」な所があったので、そこは本人も自覚をして肩の力を抜いて生活するようにしていました。

できなくてもなんとか生きていける細かいルールなどは、あまりない方がお互いが過ごしやすいと思います。

気持ちを言葉にしてハッキリと伝えて

夫婦の間で誤解を招かないように、妻にも取り組めることがありました。僕は察することは苦手なので、分かって欲しい気持ちがあったら僕にクリアに伝えるように心がけてもらいました。それは僕にも言えることで、僕の気持ちは妻にクリアに伝えるようにしました。

日常の小さな幸せが大切

最後に。

僕は妻を大切に思っている気持ちを行動に表すようにしています。小さなことに聞こえるかもしれませんが、毎朝、妻のためにオレンジジュースを絞ってあげたり、足ツボマッサージをしてあげたり、お風呂に浸かることが好きな妻のために、気づいた時に浴槽の掃除もします。

妻を喜ばせたいと思っています。

妻も、僕のために健康的な食事を作ってくれたり、一緒に散歩へ行こうと誘ってくれたり、仕事をしている時にコーヒーやおやつを持ってきてくれたりします。

そういう小さな心遣いが、「幸せ」なんだと思います。

特別なことがあった時だけに幸せを感じるようになっていると、このような日常生活での幸せは見えなくなってしまうと思います。

小さなことでも相手がしてくれたことに感謝をして、幸せを感じやすくすることも大切だと思います。

次は、私さくらの回答です。

「私の基準」を夫に押し付けていることが夫婦関係の改善の妨げになっていた

率直に言うと、旦那さんの行動を完璧に変えようとしていたら、夫婦喧嘩に発展するだけかもしれません…

ショウタさんが奥さんから指摘されて行っている7つの課題は、実は私も最初の頃にアランにお願いしてやってもらっていました。アランが自分の特性を理解して、苦手分野を改善しようという姿勢を持って欲しいと”私”が思っていました。

アランの苦手分野を改善しようと、”私”が必死でした。夫には頼まれていません。結果、夫婦関係が更に悪化するだけでした。後にアランは家庭にいるのが苦しくなり、二次障害でうつ状態になってしまった程です。

家庭に深刻な影響を与えていることがあれば(アランの場合は金銭感覚)、夫婦でとことん話し合って理解をし合う必要があると思います。でも、その他の細々したことは、完璧に求めすぎるとお互いに辛くなってしまうと思います。

忘れないようにメモをしまくっても、言動に気をつけても、アランは「完璧」には変われませんでした。「私の理想の夫」にはなれませんでした。

私が簡単にできることでも、アランは努力をしてもしても、苦手なままなこともあるのです。「分かるけど…でも、これくらいは最低限できるようになってよ!」ということも、アランにとっては単なる”これくらいのこと”ではなかったのです。

「私の基準」を夫に押し付けていることが夫婦関係の改善の妨げになっていることに、私が気づく必要がある、私の改善点でした。

苦手なことは補い合い、周りの助けも借りる

夫婦で協力し合うのは大切なことだと思うので、やることリストを作成して忘れないように工夫されることは良いことだと思います。

ただ、ゴールは完璧にこなせるようになるためではないことを分かり合った方が、この先は楽だと思います。

苦手なことをどう克服させるかに集中していた時は夫婦喧嘩が増してしまったので、それからは夫婦でお互いに苦手な部分を補っていけるようにしています。

また、夫婦だけで全てをこなそうとしてキャパオーバーするより、*周りの助けやサービスを積極的に受けることも大切だと思います。

*カウンセリング、両親や友達の助け、ベビーシッター、家事代行、買い物代行、食材宅配サービス…など

重要なことは、私が把握していればいい

アランがうっかり忘れてしまうと、私まで困ることになる重要なタスク(国に提出しなければいけない書類、期限のある支払い、締め切りのある申し込み等)においては、アランにいつも以上にリマインドしたり、それか私が責任を持って進めることが多いです。負担だとは思っていません。協力し合う所だと思っています。

ASDの思考・行動のパタンを完全に消し去ることはできない

先日、TwitterでHo+さんがとても大切なことをツイートしていましたのでシェアします。

ここからHo+さんのツイート内容です:


何度も言いますがASDは「自閉」なんですよ、自覚したから自閉が消えるワケではないのです。だから、自覚したASDとは言え、ASDの思考・行動のパタンを完全に消し去ることはできないのです。

だからね、あなたが予想できないガッカリさせるような言動がポロリとこぼれることが、なくならないのです。

「私のパートナーが、やっとASDを自覚してくれた!」って、あなたはホッとするかも知れないけど、自覚して思考回路が書き換わるワケではないのですよ。

私がどんなにがんばっても、あなたと同じ定型の思考回路を持つことはできないのです。

ASDを自覚して、あなたと共に生きていくとは、あなたと上手くやっていこうとする、折り合いを探す長い長い道のりのスタート地点なんです。

努力を認めて欲しいとはいわないけど、そんな風に考えていることは、わかって欲しいと、私は思うのです。

これを理解することは、夫婦関係がボロボロな時期は夫に対する諦めや我慢でしかなかったのですが、数年かけてだんだんと納得していきました。 自分と他人は、違う人格や考えを持つ別々の人間だという「離別感」を持つことは大切でした。

共感して欲しい気持ちはどこから来るのか?

アスペルガーの人は共感力が乏しいとは言われていますが、共感ができないわけではありません。ただ、パートナー側がどれくらいの共感を求めているか、そしてその内容にもよると思います。

共感を求めすぎる人の場合、幼少期に親が欲求に応えてくれなかったケースが多いそうなので、自分の共感して欲しい気持ちが目の前にいる夫に対してなのか、実は親に対してないのか、把握して心のケアをすることも大切だそうです。

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うまくいかない時こそ、第三者の視点は大切

もしショウタさんの奥さんが、今後の方向性を理解はしているけれど、まだ上手く受け入れられない状態なら仕方がないかもしれません。きっと辛いことが長い間あった後での複雑な気持ちの中、新しい何かを理解するには時間が必要だと思います。ご夫婦の間でしか分からないこともあると思います。

ただ、発達障害の理解や夫婦関係改善の正しい方向性が曖昧な場合は、ちょっとこの先も厳しいのではと感じます…

私達は夫婦で抱えきれないことは、夫婦カウンセリングに行ったり、個人でも通ってとても助かりました。うまくいかない時こそ、第三者の視点は大切です。

現在、夫婦関係が対等ではないのと、奥さんに相談相手がいないのは夫婦関係にマイナスだと思います。夫婦一緒にでも個人でも、カウンセリングに奥さんが行くことが私は望ましいと思います。

理想は、夫と妻、それぞれが個人のカウンセリングに行き、そして夫婦でも一緒にカウンセリングに行くことだそうです。夫、妻、夫婦のカウンセリングの先生は、みんな違う人になると思います。

相手が変わることが自分の幸せに繋がることは限らない

辛い時期は、夫のマイナスな面しか目につきませんでした。本当は夫には良い面や優しい面もたくさんあるはずなのに、感謝や尊敬の気持ちまで全部消えていました。

心に余裕がない時ほど、自分の心のケアが大切だと実感しています。相手が変わることが自分の幸せに繋がるとは、限らないからです。

最初は夫が自覚してくれたから色々改善されると思っていたけれど、夫に期待すればするほど夫婦関係がボロボロになっていく中で、そういう方向ではないことに気づきました。私が逆走させていました。

折り合いを探す長い長い道のりでしたが、お互いに上手くやっていきたい気持ちがあれば、少しずつ前へ進んでいくと思っています。

ショウタさんご夫婦の形を見つけられることを願っています。

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