夫婦円満のヒント

ハワイから〜オーガニック食品会社で働いていた私がオーガニックを選ばない理由

家族でハワイに滞在している。日本からハワイに引っ越してきた友達家族とも再会し、またひとつ楽しい思い出ができた。

さて、ハワイに向かう飛行機の中で読もうと図書館で借りた本がある。「吉川ひなのさんってハワイ在住だったな。これも縁だし借りようかな」くらいの軽い気持ちで手に取った本。

読む前は、華やかなモデルの仕事やハワイでの緩やかな生活を綴っている本と想像していたが、読み終わると、自分自身や生活を見つめ直すヒントになる本だったのかと驚いた。自分の生き方に迷いがある度にたくさん考え悩み、人としてこうありたいと行動していった吉川さんの姿に共感と感動をした。飛行機の中で引き込まれるように一気に読んでしまった。

私たちが夫婦関係をより良いものにするために見直した点と、重なる内容もあった。

パートナーシップの章は、目にした瞬間からすでに頷けるタイトルばかり。

一つ私と考えが違う点は、オーガニックについて。理由は、マーケティングとビジネスが大きく関わっていることに疑問を抱いているからだ。

私はアメリカでオーガニックが急激に注目を集めてきた時期、食品業界のデザイナーをしていた。人々がより体によい食品を選び求める行動は良いのだが、オーガニックのロゴがパッケージにないと「安全ではない」と勘違いをしたり、オーガニックではないから買わない人々も増えた。店側はオーガニックではない商品は売れないため、オーガニックのロゴがない商品を扱う会社(主に小中企業)はどんどん契約を切っていった。

私の働いていた会社でも、大急ぎでオーガニックのロゴ入りパッケージに変える作業に追われた。オーガニックのロゴ以外にも、機関が決めた何かの規定に合格したロゴをいくつも付け足した。それが何を意味してどんな内容なのか明確に説明ができないまま、もはやマーケティングにはロゴが不可欠になり、パッケージはロゴだらけになった。社長は「食材はオーガニックのロゴがない頃から安全なのに、ロゴがないと売れなくなった。すべてのロゴを取得するだけでも時間とお金がかかる」と頭を抱えていた。

そのオーガニックビジネスに疑問を抱き、従わない会社もたくさんあった。週末に地元の農園が集まるファーマーズマーケットでは「政府のオーガニックの規定には当てはまりませんが、私たちが育てた食材は安全で美味しい自信があります!」というサインを店の前に掲げて反発するブースが目立った。おかしな世の中になった。基準は曖昧だと改めて感じ、レッテルにより人々の物事に対するイメージが簡単にひっくり返ってしまう怖さも受けた。

田舎に引っ越してきて農園や牧場の方々と身近に関わるようになると、オーガニックに対する考えを直接聞く機会ができた。生産者たちはビジネス目的のためにオーガニック認定を受けるつもりはないから、今までのやり方は変えないという。それでもここの店やお客さんは離れていかない。田舎は生産者と消費者の距離が近く、消費者は自分の目で何が起こっているのかを知ることができるからだと思う。メディアで情報を得るしかなく、ブランド食材が棚に並ぶ店が多い都会暮らしの人たちの方が、なぜオーガニック消費率が高いのかが理解できる。

今の私は、買い物に行った時にそこで手に入るものを買うので、オーガニックの食材もそうでない食材もどちらも買う。例えば、アジア系スーパーに行った時はオーガニックではない大根を買うが、近所のスーパーではオーガニックの大根しか売っていないので、それを買う。オーガニックを避けはしないが、あえてオーガニックだけを選ぶことはない。近所の無人販売所もよく利用する。

オーガニックビジネスに実際に関わってきた結果、オーガニックに対する自分のあり方がこうなるとは複雑な気持ちだ。