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アスペルガーという難しいトピックをユーモラスに描いた映画

夫の感想です。

今まで観てきたアスペルガーに関する映画やドラマは、頭脳派の主人公が才能ぶりを発揮するという似たようなストーリーがほとんどだったが、この映画はラブコメディー。

主人公のシモンはアスペルガー症候群。人と関わることが苦手、いつも同じ服を着ている、同じ物を好んで食べる、言葉通りに受け取ってしまう、人の表情から気持ちが汲み取れないなど、僕と似たようなところがたくさんあった。しかし、シモンが時間に細かい所は僕と真逆だった。僕は時間通りに物事を進めることが苦手で、間に合わなかったことを後回しにしがち。

アスペルガーのマイナスになってしまう特性も、明るい雰囲気でユーモアを交えながら出てくるので楽しい。

しかし、もちろん観ている方は笑えても、僕達夫婦はアスペルガーを二人共よく理解していない頃に大ゲンカを経験してきたので、現実は笑えないと思う。

それが分かるシーンは、シモンが原因で、兄のサムと彼女が別れてしまったこと。サムの彼女がシモンに我慢できなくなったから。「あんたに耐えられるバカ女を探せばいいわ!」と、サムの彼女はシモンに言い放ち、サムもシモンに限界で怒鳴り散らしていた。両親もシモンに頭を抱えていた。

「あなたが関係を持っているのは私じゃなくて、あなたの弟よ!」彼女がサムにと言ったセリフは、前に妻が僕に言ったセリフと全く同じだった。

妻は、僕の家族のアスペルガーやADHDからくる問題が原因で僕と離れたいと思ったことがあるそうなので、サムを愛していても別れを決意した彼女の気持ちが痛いほど分かると言っていた。

アスペルガー当事者の気持ち、当事者に関わる兄弟の気持ち、両親の気持ち、家族の恋人の気持ちが全て描かれているところも良かった。

興味深かったシモンの行いは「僕はアスペルガーです」と周囲にきちんと説明をしていること。自覚をして周囲に苦手分野を説明できるということは、関わる人が自分に違和感を持ち、距離を置いてしまうのを避けられる。

人に嫌われまいと演技をし続ければ、逆に自分の魅力を失ってしまう。「自分はこういう人間です」と堂々と伝える真っ直ぐな姿勢があれば、シモンのようにそのままの彼を愛してくれる人といつか巡り会えるのだと思う。

アスペルガーという難しいトピックをこんなにもユーモラスに描いた映画は初めて。オススメです。