夕方から、強い雨と暴風による嵐が吹き荒れていた。それは夜中まで続き、不安な気持ちを抱えながら眠りについた。
地響きがした気がして、目が覚めた。森のどこかで木が倒れたのかもしれない。窓から外を見るとまだ真っ暗闇。嵐はまだまだ通過中なようで、また眠りについた。
朝を迎えるとすっかり晴れていた。朝食後にいつも通り、敷地内に作ったハイキングコースを家族で歩くことにした。森に強風が吹き荒れた後は、木がフェンスに倒れているかもしれないのでそのチェックも兼ねての散歩。
目線をフェンス沿いにたどりながら歩いていると、庭にあるコテージの横に一本の大木がずっしり寄りかかっている。え?屋根に木が刺さってる??

慌てて玄関を開けて部屋に入ると、頑丈な金属の屋根が天井を突き破り、その穴からキレイな青空が見えた。電気もつけていない部屋が明るいわけだ。
びっくりしすぎてぽかんとしている夫に「私、前から天窓がほしいって言ってたじゃん」とジョークを飛ばすと、驚いた顔のまま笑いがこぼれていた。
まず二人で胸を撫で下ろした理由は「このコテージに誰もいなくてよかった!」ということ。
私達は以前からご近所さん協力のもと、コテージを難民家族や必要な人に貸す方向で話を進めていたのだ。
早速、大木を片付けてくれる業者、屋根を直してくれる業者、保険会社の3社へ電話をして予約をした。しかしここからが大変だった。
予約した日、やっぱり来ない
アメリカは、予約した日に業者が時間通りに来なかったり、最悪連絡なしのドタキャンがよくある。だから当日に「また来ないかもよ〜」なんて夫婦で気楽に待ってはいたものの、私は心のどこかでそんなことはないと期待していたら、やっぱり予約の時間を1時間すぎても来なかった。もちろん連絡もない。なんと3社とも!笑
こちらからリマインダーの電話をすると、大木を片付けてくれる業者からは「緊急の用事ができたから今日は行けない」と言われ(嘘っぽかった)、屋根を直してくれる業者からは「トラックが壊れたから今日は行けない」と言われ(嘘っぽかった)、保険会社からは「あと10分で着くよ」とフレンドリーに言われた。10分後ではなく50分後に来たのだが。誰もドタキャンや遅刻をこれっぽっちも気にとめていなかった。
困るのは、こちら側だって仕事や用事を調節して家で待っているのだ。来るか来ないのか分からない業者を何時間も待つなんて、その後の予定までもがくるってしまう。
と、ここまでが3ヶ月前の話。そう、まだ何も始まってない。遅すぎると思う。ほっとくと業者と連絡が途切れるので「いつから工事が始まるのか確認してみる」と、何度夫が電話したことか。このままでは屋根の穴から雨が入ってしまうので、別の業者に丈夫なビニールシートみたいのを取り付けてもらった。
アメリカでDIYが盛んな理由
業者に振り回されている時期のある日、ご近所さんアプリの投稿が目にとまった。珍しくたくさんのコメントがついて賑わっている。気になってクリックしてみた。
「先日の嵐は大変でしたね。庭の木が倒れてしまったので業者を雇いたいのですが、やり取りだけでもう疲れてしまいました。誰かよい業者を紹介してくれませんか?私の希望は、予約した日に時間通りに来る人、ドタキャンしない人、真面目に仕事をする人、嘘をつかない人、請求額を騙さない人です!!」
思わず笑ってしまい、そのまま夫に見せにいった。苦労している点は一緒なのね。
ここに追加があるとしたら、ゴミをその辺に投げ捨てない人。いつも業者が帰った後は、庭や敷地内のゴミ拾いに追われる私。お菓子やサンドイッチが入っていたプラスチックの袋、ペットボトルや空き缶、大量のネジや金属の破片、タバコの吸い殻など。どうしてゴミを他人の家の庭に捨てて行くんだろう。どうして注意しても捨てて行くんだろう。
コメント欄は同じ経験がある人達からの共感の嵐だった。みんな適当な業者にイライラしてる 笑。何人かが「〇〇業者は信用できますよ!」と自信を持って紹介していたのが、まさかのうちで雇っている業者で、嬉しいようなスッキリしないような気持ちになった。
アメリカでDIYが盛んな理由はここにあるのだろうか。そんな大きな工事まで自分でやるの?と驚く内容が多い。仕上がりはまずまずになるが、それでもプロに任せるより、自分でやった方がスムーズだということなのか。
いまだに予定が未定のまま、屋根に穴が空いたまま、春を迎えようとしている。


