アメリカでの学び

アメリカの貧困は「肥満」という真逆の社会問題

世界の貧困が「飢餓」に苦しむ人達であれば、アメリカの貧困は「肥満」という真逆の社会問題がある。学生の時、アメリカの貧困家庭に食料を寄付する活動に初めて参加した。同じサポーターの人達から「分からない事があったら何でも聞いてね」と言われていたが、ずっと聞けない質問が一つあった。

「食料をもらいにくる人々にはなぜ肥満が多いのか?」という疑問。

日本人の基準で想像するぽっちゃりではなく、健康や生活にかなりの支障が出ているであろう体型の人達も珍しくない。歩くことが困難で電動カートに乗っている。食料が不十分な家庭だと思っていたのに、満足に食べれているのではないか?

貧困とは「食料がなくて痩せ細って可哀想な人」だと思っていた

私は日本で育ち、学校で世界の貧困を学び募金活動にも参加してきた。バイトができる年齢になると自分で団体を探して寄付をしてきた。そこにはいつも、ガリガリに痩せてお腹だけぽっこり出た子どもが、涙を浮かべてこちらに真っ直ぐな眼差しを向ける写真があった。動画では、その子ども達を抱えた母親が哀れな表情で「どうか私達を助けてください」と泣いていた。アフリカ、南米、東南アジアの貧困が中心で、アメリカは見たことがなかった。

日本の貧困もよく知らなかった。冬でも薄着で登校していたクラスの男子は「たくましい!」と先生に褒められていたのは覚えている。大人になってから、本当は貧困家庭で着る服がなくて困っていた、とその人から知らされた。

話は戻り、だから世界の貧困というのは「食料がなくて痩せ細って可哀想な人」という概念だけが私の中であった。なのにここアメリカで、食料の列に並ぶ貧困らしき人達の体型は真逆。しかも哀れとはほど遠く、笑顔でハグし近況報告をし合う人々、好物を見つけて飛び跳ねる子ども達、家族で楽しそうに笑い合う人々など、賑やかな時間だった。

経済的に豊かであることよりも心が豊かであるほうが大切、と感じた大切な経験の一つになった。

寂しさや孤独の空白を食べ物で埋めようとする行為

アメリカは人々による食料の寄付活動が盛んなのと、国のサポートがあるので、それらを利用すれば食料がない状況には至らない。ではなぜそれが肥満につながるのか。三つの原因が大きく目立った。

一つ目は、栄養バランスやカロリーの知識が乏しい人達が多いこと。だから安くて手軽でお腹が満たせる食べ物、つまり身近なファーストフードやインスタント食品、炭酸飲料を選んでしまう。

私が今まで参加してきた食料の寄付活動はどこも、フレッシュな食材も豊富に揃っていたのだが、人気は缶詰に偏っていた。すでに濃い味がついているスパムやパスタソースやスープ缶が好まれる。味覚は幼少期に作られるので、親がそのような食生活で子どもを育ててしまうと、ファーストフードやインスタント食品の方が美味しいと感じる味覚が出来上がってしまう。だから自分で料理しても味が濃くないと満足できない。

二つ目は、心のケアが必要な人達。育った家庭環境に問題があったり、幼少期に深く傷ついた経験をそのままにされていて、そこからくる寂しさや孤独の空白をひたすら食べ物で埋めようとする行為がある。

この二つの原因は独立して存在しているのではなく、繋がっているケースがほとんどだった。

三つ目は食費への誤解。自炊するよりもファーストフードやインスタント食品の方が安いと思い込んでいる。そのような食生活ではいずれ病気になり、医療費まで高くついてしまう。肥満の連鎖が何世代も続くのを防ぐために、食生活と健康の繋がりを教える教室も開かれていた。

痩せていればいいわけではない

このような体験を肌で感じてきて、自分の味覚を作ってくれた両親への感謝の気持ちが湧いた。しかも、世界が注目するヘルシーなのに栄養バランスが良い「和食」が食生活の中心であることは、日本で生まれ育った幸運だと思えた。

ただ、私の日本での学生時代を振り返ると、痩せすぎだった。テレビや雑誌の影響からか、クラスの女子はカロリーを必要以上に気にしたり、すでに痩せているのにもっと痩せたい願望がある子が多くダイエットが盛んだった。

社会は今でも、痩せている方が美しい、と子どもに教えているような情報が溢れていると感じる。貧困でもそうでなくても、食文化や人々の意識の違いで肥満になったり痩せすぎになったりで、結局はどちらも不健康。

健康的な体型と食生活について改めて学ぶ必要は、日本もアメリカもあると思う。
心の健康に繋がっているのだから。

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