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「普通」を目指せば目指すほど苦しくなっていく彼女の葛藤

「主人公は発達障害なのでは?」と思わされるような行動や発言がどんどん出てくる。しかし、この小説の中で「発達障害」や「アスペルガー症候群」という言葉は一切出てこないので想像になる。だから私にアスペルガーの知識がなかったら「主人公は変わった人だな」と思うだけだった。

主人公は誰にも迷惑をかけていないし幸せなのに、周囲からは「普通ではない」と心配されたり、責められる。その「普通」を目指せば目指すほど苦しくなっていく彼女の葛藤が書かれている。アスペルガーの人と関わっている人、生きづらさを感じている人、どちらも参考になる本。夫も、主人公の気持ちや経験したことを共感しながら読んでいた。

最後には「普通とは?」「本当の自分とは?」という疑問が残り、深く考えさせれた。

番外編:英語版は可愛いおにぎりの表紙

内容のレビューとは別に、英語版の表紙のデザインが日本語版と違いすぎてびっくり。英語版のタイトルも、コンビニ「女性」に変えてある。

私は本屋さんで可愛いおにぎりの写真が目にとまったので、外国人向けのおにぎりの作り方の本かな?と思い手に取った。そしたらまさかの、コンビニ人間。ずっと英語版を待ち望んでいたので、即購入した。

夫は「こんなに考えさせられる素晴らしい作品なのに、表紙が可愛すぎる。だからもし本屋さんに並んでいても、僕はまず手に取らないと思う。若い女性向けの小説かと勘違いしてしまう」と感想を述べていた。

日本の本としてアメリカでマーケティングするにあたり、こちらのデザイン方が日本らしさや女性らしさを出しているのかもしれない。

日本語版のデザインは金氏徹平さんの「タワー」という作品。どっしりとしたビル、でも何かを訴えていてコントロールしきれないような歪んだビル。私は、日本語版の表紙の方が本の内容に合っていると思う。