日本の教育と心の健康

日本人生徒だけ言われた「もっと自分らしくいていいんだよ。大丈夫だから」

アメリカでESLに通っていた時、授業終了後に先生に呼ばれて日本人生徒だけ集められた。そしてこう言われた。

「もっと自分のことを自分から話してね。言葉で伝えるまであなたの気持ちは誰も分からないから。英語は間違えてもいいから、完璧に話そうとしすぎないでどんどん発言しようね」

そこで何年も働く先生は、毎年日本人生徒の扱いに悩んでいたのだ。

いつも日本人は成績トップクラスに振り分けられる(文法は得意だから)

しかし肝心の授業はと言うと、他国の生徒がバンバン発言している中、当てられるまで大人しく出番を待っている。

そして間違えると即「I am sorry」と謝ってくる(泣)

分からないことが、恥ずかしいと思ってしまう。

困ったことがあっても「困ってます」と素直に言えない。

頼ることで、周りに迷惑をかけてしまうと考えてしまう。

嫌なことに対してNOと言わず、濁した返事をしながらニコニコしている。

自分の意見を言ってくれない。

自分の気持ちを察してくれるのを待っている。

ーこの子達は何を考えているのだろうか?ー

それが日本の文化からくる日本人の性格だと分かるのに年月がかかったそうだ。私達は先生から、「もっと自分らしくいていいんだよ。大丈夫だから」と目を見つめられて言われた。窮屈そうに見えたんだと思う。

自分らしさって、なんなんだろう。

日本を出て初めて、自分探しを始めた。

日本で生まれ育ち日本の教育を受けたのなら、日本社会に馴染めるように生産されていく。馴染めない人は弾かれてしまうから必死に合わせるしかない。日本人の間でもちろん個々の考え方に違いはあっても、日本全体を海の外から眺めると結局は皆、同じような傾向がある。正真正銘、日本人をしている。特に細かな部分の共感に関しては、日本人同士だからできることが多いと感じる。

これは1億2571万人が全く同じ考え方をしているという意味ではない。大多数が、なんとなーく似ている考え方をしているという意味。

東日本大震災のニュースが海外で報じられた時、「日本人の国民性」に注目が集まっていた。災害時でも冷静に秩序正しく、真っ直ぐ列に並んでいる日本人。お互いを支え合い、助け合い、譲り合う日本人。日本では当たり前でも、海外はびっくりしていた。その素晴らしい姿がアメリカの新聞を埋め尽くした。

ご存知の方は多いと思うが、アメリカでは略奪に発展することがある。アメリカは様々な人種や文化が混ざり合っているので、日本のように集団心理を示す行動をすることは難しい。だから私達は万が一のことを考えて、非常食を十分すぎるほど用意してある。

日本人が気づいていない素晴らしい国民性はたくさんある。日本人が気づいていない窮屈な国民性もたくさんある。自分が気づいていないだけで、自分とは良くも悪くも文化に覆われていると思う。

「もっと自分らしくいていいんだよ。大丈夫だから」

先生のあたたかな言葉が再び聞こえる。