夫婦円満のヒント

トラウマ…うまく言葉にできない理由

トラウマの多くは非言語の領域にある。だから自分の気持ちを言語化するカウンセリングだけでは、効果を感じられない場合がある。言葉が出てこないから。身体の感覚に集中する瞑想やヨガ、非言語で行うアートセラピーなどを合わせていくと効果が出てくる。

夫婦関係の改善がうまくいっていない時期で、夫がトラウマを抱えていると知らなかった頃。口論中に夫が突然その場から自分の部屋に逃げて数時間こもったり、いくら問いかけても黙り込んで凍りついたように動かなくなることがあった。その態度にすごく腹が立ち、時には絶望を感じた。当時読んでいた本にそのような表現が書いてあったため、発達障害の特性だとも勘違いしていた。でも実は、トラウマに触れたことで身体が心を守ろうとしていた防衛手段だった。

ずっと後になって夫が打ち明けてくれたことだけど、私が怒りや悲しみを爆発させている状態を見て、幼少期に目撃していた両親の喧嘩、母親の姿と重なってしまっていたそうだ。夫の場合、大人になってからはその場から逃げたり、逃げられない場合は意識を逃していたから応答が薄かったのだ。

幼少期の記憶がない人がいる。特定の時期や年齢の間だけ、どう生活していたのか思い出せない。記憶が断片的なこともある。子供の場合、家庭内で心が傷つけられることが起きても、逃げられないことが多い。だから代わりに意識を逃がしている。そのため、その時期の記憶だけないのだ。でもトラウマは頭に記憶されていなくても身体には記憶されている。

例えば、暴力や体罰を受けていた子供が、大人が手を上にあげただけで、ぶたれると思い反射的に目をつぶったり手で頭をかばう行為。これは私の実体験で、私は自分の髪に触れようとしたり、まくれてきた洋服の袖を直すため、手を上にあげただけだった。

夫はよく「カウンセリングに行っても話すことがない」と言っていた。当時は心を開いて話せる状態にいっていないだけと思っていたけれど、本当に言葉に出てこないから話せないのもあったそうだ。非言語の領域にあるものを言語化するのは簡単ではない。

現在は2人ともカウンセリングは通っていないけれど、夫は瞑想を日課としている。自己対話から自分ですら気づいていない感情を見つけ、心のわだかまりを知ろうとしている。私はヨガがあっていて、不規則ながらもなんとか続いている。ヨガは日本にいる時からやっていて、終わった後に身体が感じるなんとも例えられない爽快感は、単に運動して汗かいたからだと思っていた。でも、身体の感覚に触れることで、身体が記憶しているわだかまりが癒されていくのだと知った。心の回復と同じように。

心の感覚にアプローチするカウンセリング、身体の感覚にアプローチする瞑想やヨガなど。併用すると、今後生きていく上での不安や混乱を避けていく力に繋がっていくかもしれません。