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元舞妓さんの告発で思うこと

少し前に元舞妓さんの告発が波紋を呼んでいたが、昨夜読んでいた林真理子さんの小説「愉楽にて」に同じような内容が書いてあり驚き、読むのが重くなった。第三章の「京の遊び」に、芸妓さん達と男性客が一緒にお風呂に入る「お風呂入り」から性的なサービスまでが鮮明に描写されている。

でもあまりにも性的サービスに慣れていそうなのと、芸妓さん達の方が男性客をもて遊び楽しんでいるように描かれているため、おじさん相手に裸になる芸妓さん達の気持ちを考える視点を、なくしそうになる。もし元舞妓さんの告発を知らなかったら、この小説を淡々と読んでいたであろう自分が恥ずかしい。

林真理子さんの小説は、私はいつもノンフィクションとして読んでいる。狭い社会で起こっている問題、業界の仕事内容や人間関係があまりにも事細かに描かれているので、実際に経験した人達から相当な量のリサーチやインタビューを重ねているとわかる。

しかし「旦那さん制度」や肉体関係の絡みが出てくるシーンでは、登場人物を「芸妓 x 妻を亡くした男性」という設定にしている所が、林さんのせめてもの配慮なのかと思ってしまう。さすがに「未成年の舞妓 x 既婚おじさん」という設定は書けないだろう。それが現実であるとしても。作家としての現実は、法律に触れている社会の闇を書くリスクもあるし、小説のドラマ化も難しくなってしまう。

目に入ってきた文字の表面的な部分だけで全体を判断するのは避けたいけれど、伝統文化に闇が存在しているのは本当なんだと思う。現代の舞妓さんも芸妓さんも、次世代の方々も皆、日本の伝統文化を引き継ぐ人として大切にされることを祈りたい。