アメリカでの学び

会社経営を通して学んだ「人の心」

中国の取引先から「上海がロックダウンし、周辺の私達の地域も近々そうなる。後々必要なものでも今伝えて」と言われた。続けて「コロナが広まってからあなたの会社も苦しい時期だと思う。金銭的なことが心配だったら相談して。今お金はいりませんから」と言われ朝からパソコンの前で涙ぐんだ。

私はリーマンショック期で職を失った後、起業した。(アメリカ人の職がないのに外国人枠はもっとない。このままではビザを失うため自分で起業する決意をした)失敗を繰り返しながらも少しずつ従業員が増え、中国含めた他国の取引先もでき会社は成長していった。中国人と深く関わったことがない頃は、ネットやニュースからよくないイメージも持っていた。確かに国民性というものはどの国も存在し、その国で当たり前とされる同じような常識や価値観を持つ人間に育つ。でもビジネスとは関係ない所で優しさや温かさや礼儀正しさも感じ、「人の心」というのはそれぞれで、色んな人がいるとも改めて思った。

中国人の中には、家は田舎にあって都市に出稼ぎに来ている人達も多いと知った。子供は祖父母が育てていて、子供には年に1~2回しか会えない。その地域ではそれが普通なんだと。もちろん悲しい。でも家族が生き延びることが最優先。「家族が毎日一緒は当たり前ではないよ。大切にしてね」と言われたこともあり、熱く重いものを心に感じた。

コロナが広まってから世界の厳しい目は中国へ向けられ、その取引先の人達も、今までビジネス関係だった世界中のクライアントから心ない言葉が飛んできたり、傷つくメールを数え切れないほど受け取ってきたそう。でも自分達も経営危機になり、大切な家族や友達を亡くし、被害を受けて苦しんでいる。戦争と同じように、突然自分の国が加害国になり、自分までもが加害者と見られてしまう。生まれる国は選べないのに。

「そんな中、桜さんから受け取るメールはコロナ以降もずっと変わりませんでした。変わったことといえば、【あなたとご家族が健康でありますように】と最後に付け加えられるようになったこと。以前と変わらず接してくれること、私達を気遣う心に何度も救われました。ありがとうございます」と言われた。

会社経営を通してビジネスのことはたくさん学んだけれど、それ以外の学びの方が多い。お互い。人々が安心して過ごせる世界になって欲しいと心から願う。

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このニット帽は、クリスマスプレゼントに中国の取引先が送ってくれた。可愛くてとても気に入っている。しかもなんと夫へもグレーのニット帽をくれた。(今は夫が家の中で紛失中で写真が撮れなかった…笑)

私、既婚者で夫がいるなんて取引先に言ったことあったっけ?と思い聞いてみたら、数年前の会話の流れでこう言ったらしい。

「桜さんは日本で生まれ育ち、今はアメリカで働いているんですよね?
「そうですよ」
「すごい挑戦ですね。海外での苦労がたくさんあったと思いますが、それでもアメリカにきてよかったと一番感じることはなんですか?」

「夫に巡り会えたことですかね」